釣り場における生物多様性を考える【はじめに】

このコーナーは、『生物多様性条約』を批准した日本が国内にフィードバックさせるために国が実施しているさまざまな環境政策に関して中立の立場を守りながら、愚かな釣り人の言動を愚かな釣り人のひとりとして考察し、釣り人のひとりとしてどうあるべきかを模索するものです。

 『釣り糸の両端には魚とバカがくっついている』という話を聞いたことがある。渓流マンたちは在来魚を守るぞと意気込んで外来魚を目の敵にする傍ら、自分達の楽しみを目的としてその在来魚を乱獲したり地域固有種の遺伝子を錯乱させるような放流を実施したりして、その種を絶滅の危機に追いやったり、釣り場に平気でゴミを捨てたりして水辺環境を汚している。要するに、水辺の環境問題に関しては如何なる釣り人の意見も説得力に欠ける。

『釣り人が環境を語る資格なんて無い、水辺環境を語りたかったらその前にあなたの持つ釣り道具を全部処分しなさい』というようなことも良くいわれる。『ニンゲンは地球に巣食うガン細胞なんだ。生きている限り、他の生命を奪い何らかの形で自然を蝕んでいる。だから今さらそんな事で騒いでも手遅れだ』そんな声も聞こえてくる。

 でも、こんな選択肢があってもいいと思う。『ニンゲンが業の深い生き物であることは十分承知仕っております。でも困ったことにすぐに死ぬわけにはいかないんです。だから、少しでも環境に優しくしてあげながら生きさせてください。』『釣り人が業の深い生き物であることは十分承知仕っております。でも困ったことに、釣りをやりたいんです。だから、少しでも水辺環境に優しくしてあげながら釣りを楽しませてください。』


世間では外来魚がやたらと取りざたされていますが、こんな興味深い資料が公開されています。

生物多様性情報システム・動物絶滅危惧種 検索 より抜粋
http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html

■サケ目 サケ科 絶滅危惧IB類(EN)
和名 :イトウ  
・・・・・
・分布域とその動向
1990年代に北海道で成魚が確認できているのは18水系。0歳稚魚が確認できているのは9水系しかない。現状のままではさらに分布域は狭まるが、経済効率を追求せず現在の自然環境を一定レベルに保全できる地域では本種個体群を維持することが可能と推定される。

■サケ目 サケ科 準絶滅危惧(NT)
和名 :オショロコマ
・・・1990年代には多くの河川で個体数が減少し、絶滅したと推定された支流もある。他方、森林伐採・林道造成が行われていない、あるいは河畔林が再生した所では、個体数が増加していると推定される河川が数ヶ所ある。・・・

■サケ目 サケ科 準絶滅危惧(NT)
和名 :ビワマス
・・・本亜種の産卵場である琵琶湖流入河川には堰堤やダムが設置されていて、親魚の移動を妨げているとともに、また降湖型のみの人工採卵、孵化放流が行われていることから、本亜種の本来的な遺伝的特性が失われる可能性がある。水産庁のデータブックでは希少種とされている。

■サケ目 サケ科 準絶滅危惧(NT)
和名 :ミヤベイワナ
・・・原産地では、人工授精により増殖が行われ、時期、場所、数を規制して釣りを許可している。水産庁のデータブックでは希少種とされている。北海道の天然記念物。

■サケ目 サケ科 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)
和名 :紀伊半島のイワナ(キリクチ)
・・・本地域個体群(キリクチ)は種として記載されるほど孤立し、形質を特化させている。生息渓流の水温の上昇や生息場所の破壊、釣りの圧力や競争種の導入がキリクチを危機的な状況に追いやっている。

■サケ目 サケ科 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)
和名 :西中国地方のイワナ(ゴギ)

・存続を脅かしている原因とその時代的変化
・・・・また、中国縦貫道路は山間部を通過するので、その影響もあろう。近年のアウトドア志向による乱獲(41)も危惧される。

・特記事項
ゴギは各県の河川において第五種共同漁業権の漁業権魚種で増殖義務がある。効果的との理由で出自が定かでない稚魚や発眼卵を放流するのは、遺伝子攪乱や分類学上の混乱をもたらす。水産庁のデータブックでは危急種とされている。

さあ、これだけ列挙したところで、どうでしょう?
外来魚の無闇な放流には賛成ではありませんが、在来種が存亡の危機に瀕している原因は、工事による河川環境の荒廃はもちろん、渓流釣り師による乱獲や、漁協による乱放流が大いに関わっていることが国の調査で判っているのです。

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