詳しすぎる釣り情報の功罪

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高速道路や新幹線の整備が進み、今まで釣行に何日も要した辺境の地にある渓流へのアクセスは飛躍的に向上した。しかし、貴重な休日に割高な交通費を使って遠くのフィールドへ出かけ、知らない川で右往左往して一日が終わってしまった。なんてことはよくある話だ。それはそれでアドベンチャー的な要素があり楽しいのだが、現地にガイドがいればそんな苦労もしなくて済む。しかし、そうだれもが現地に知己を持つわけでもない。

そんな釣り人にとって、入渓点や入漁券販売所そしてシーズンによる傾向などの渓流の情報が詳細に記載されたガイドブックはタイヘン心強い。『もっとたくさんの釣り人に来てもらって少しでも多くお金を落としてもらいたい』という願いから、釣り人の来訪を歓迎する傾向にある所も多い。近年全国各地において急激に増加したC&R区間(キャッチ・アンド・リリース区間)を設置している河川では、概ねこのような傾向にあるといって差し支えないだろう。

観光的な要素を含むフィールドを対象として、そのようなガイドブックで紹介することについては需要と供給のバランスによって十分成立すると思う。しかし、今までひっそりと静まり返っていた周囲に広がる渓流についても詳細な情報が紹介されてしまうと、ガイドブックの情報を頼りに訪れる釣り人たちでごった返すとまでは行かなくとも、従前では考えられないぐらい多くの入渓者に荒らされる運命になる。

恐らくそんな光景を見て、住民もびっくりすれば魚もびっくりするだろう。日本の河川はほとんど全部がパブリック・ウォーターであるから、遊魚期間内であればいつ誰がどこの川に入ろうと自由気ままである。ガイドブックを頼りに遠くの川で迷うことなく釣りができた人は喜ぶだろう。都会から来た釣り人にお金を落としてもらった地元の人は経済効果が出たと喜ぶだろう。そして地元の愛好家は、『あの本のせいで川がダメになってしまった』と、ため息をつくことになる。

ガイドブックの著者、観光目的とした地元の宣伝、そこを訪れる釣り人、地元の渓流愛好家、誰一人として悪気なんてないだろう。ないと信じたい。でも、その結果、入渓者の急増した川は荒れて魚影がなくなり、いつしか成魚放流物のヤマメやイワナにとって変わられていき、その中で地域固有の遺伝子は気付かぬうちに錯乱されていき、ふと気が付くと今までいなかったような種の魚がそこに泳いでいたりするのだろう。

山村においては『経済効果を追求しない』ことがその場の自然を保持するには一番の方法だ。しかし、山村に住む人の立場はどうなるのだろうか。『地域振興と自然保護』この相反する課題は日本ではどこの渓流でも見られる光景だ。しかし個人レベルの話ではとても解決の糸口はつかめない。

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