
高野さん(親方)に、竹竿をつくってもらいました。中禅寺湖を始めとした湖のキャスティング用と鬼怒川本流をはじめとした本流ウェットフライ用を兼ねた竿です。テーパーデザインは「CC de France」というハーディの名竿で、日本では「ア・フライフィッシャーズ・ライフ」という著書と、'PEZON ET MICHEL'という銘柄の竿で有名なシャルル・リッツが会長を務めていたファリオクラブというフランスの釣りクラブ向けに、ハーディが作った竿ということで、キャスティングがとにかくオモシロイのです。
この竿は、長さ8フィート6インチ、ライン指定5番6番、中空ではない、ナテュラル・ケーン、というスペックで、昨年末のセクトラ総会の折に、漆原さんと長谷川さんのロッドを振らせていただいたときに、高野さんの頭の中では、既にどんな竿を作ろうかという設計がされていたらしく、いつのまにか出来上がっていたのでした。
スーツの仕立て屋さんが、お客さんの話をちょっと聞き、その仕草をちょっと見ただけで、サイズも測らず、生地の選択もしていないのに、その人の体型、趣味、懐具合にピッタリとあったスーツを作ってしまうというような、まるで夢のような、魔法にかけられたような感じです。
しかしホント不思議な竿です。シューティングヘッドも乗るし、スペイもできちゃう。ティップが強めなのでウェット風かと思えば、ティップを繊細にチャカチャカ動かすこともできる。ロングキャスト重視かと思えば、ショートレンジでのソフトなプレゼンテーションも軽くこなす。8フィートを越えるバンブーはバランス的に作りたがらないビルダーさんが多いけど、8半でもぜんぜん持ち重りしないし、ホント不思議で夢のような竿です
しかし、ニンゲン、偉大な人ほど物静かなものですね。

フライフィッシング業界で活躍?しているほぼ全員のフライフィッシング生命が、その人のたったひと言でいとも簡単に吹っ飛んでしまうのはおろか、業界全体に計り知れない影響を及ぼしてしまうので、ひと言、ひと言の重さが、我々凡人とはまったく違うのです。
だから、そのひと言ひと言は、決して軽っぽしいものではないし、言葉数も多くない。しかしあらゆる対象に思いやりをこめて発せられているのをひしひしと感じます。
その名は「高野さん(親方)」
ハウスオブハーディ・キャスティングスクール前校長、故ジョニー・ローガン氏より「インストラクターを教えるインストラクター」として免許皆伝を授かった、ただひとりの日本人です。
そんな高野さん(親方)より賜ったひと言、ひと言を、自分なりに、かみ締めています。以下は、高野さんといろいろな話をしながら、ワタシが感じたことですので、高野さん本人とは無関係です。

「ロッドビルダーを生かすのも殺すのもユーザー次第です。」
これは、お腹の底にズシリと響きました。
竿を使う人によって、その竿の価値が高くも低くも変わってくる。
どんなに優れたビルダーが作った竿であっても、ミーハーで軽っぽしい人が使えば、ミーハーで軽っぽしい人向けの竿として世に認知されてしまう。ヘタクソが使えば、ヘタクソ向けの竿として世に認知されてしまう。雑誌やビデオで大々的に宣伝をしながら人気取りをして売上を伸ばすなどもってのほか...
すなわち「この竿を手にしたからには、公私にわたり襟持正していき、自分自身とともにロッドとロッドビルダーの価値を高めていかねばならない」
ってことだと解釈しました。

「ハーディ的にはアンフェア-がまかり通っているが何も言わない。影響力が大きすぎる。」
オーバーヘッド、スペイ、スカジッド、アンダーハンドなどなど、キャスティングスタイルも色々あるし、DT、WF、ST、フライラインのテーパーデザインも色々あり、さらに「ミッジング」「ルースニング」「ロングリーダーティペット」「極細ティペット」「LL・BL・BS」などなどなど、「より遠くへ飛ばすための工夫」や「1匹でもたくさん釣るための工夫」というのは、数え上げたらキリがありませんけど、「より遠くへ飛ばすための工夫」や「1匹でも多く釣るための工夫」というのは、ハーディ的には「アンフェア-【やってはいけないこと】」だそうです。
が、「より遠くへ飛ばすための工夫」や「1匹でもたくさん釣るための工夫」を【アンフェア-】として律するのは、あくまでも王侯貴族の遊びとしてのルールであって、【少しでも遠くへ飛ばしたい】【1匹でもたくさん魚を釣りたい】という希望を強く抱いているような、一般的なフライマンたちと、そういった需要に対して、必死に応えようとしているフライフィッシング業界に対して、とやかく言ってはならない、どうぞお好きなように♪というスタンスを貫けってことでしょう。
そして「スネに傷持つ人のスネを蹴飛ばすような真似はしてはならない。」これも【アンフェア-】なことなのでやってはならない。フライ業界の人もそうですし、自分もそうですけど、スネに傷持つ人は意外と多いものです。昨年、一昨年、今年の正月ぐらいまでの間を通して、「【人差し指攻撃】という、一部のフライマンによる熾烈で醜い足の引っ張り合い」を、身をもって体験してきましたし、【釣りのスタイルの違いによる釣り人同士の確執】は、後を絶ちませんけど、そういったことは低級な人たちがやることなので決して相手にしてはならない。と解釈しました。
高野さん(親方)が発するひと言、ひと言は、まさしく、ハーディの帝王学という感じがしました。
この竿は、長さ8フィート6インチ、ライン5番6番、中空ではない、ナテュラル・ケーン、というスペックに対して、とても軽いのですけど、高野さんのひと言、ひと言は、計り知れないぐらいに重く、高野さん(親方)ロッドのオーナーになったという、責任の重さを感じています。
