悪竿論-7 【最終回】

然し、しからば悪竿は良竿なりやといへば、必ずしもさうではない。知性なき悪竿は、これはほんとの悪竿だ。多情淫奔、たゞ動物の本能だけの悪竿は始末におへない。然し、それですら、その多情淫奔の性によつて魅力でもありうるので、そしてその故にミレンにひかれる人もあり、つまり悪竿といふものには一般的な型はない。もしも魅力によつて人の心をひくうちは、悪竿ではなく、良竿だ。いかにフライマンを苦しめても、魅力によつてフライマンの心を惹くうちは、良竿なのだらう。

魅力のないブランクスは、これはもう、決定的に悪竿なのである、天然人口といふ素材の別が存在し、異種への思慕がフライフィッシングの根幹をなしてゐるのに、異種に与へる魅力といふものを考へること、創案することを知らないビルダーは、もしもそれが頭の悪さのせゐとすれば、この頭の悪さは問題の外だ。

天才ビルダーといふタイプがある。数学ができるのだか、語学ができるのだか、物理学ができるのだか知らないが、人間性といふものへの省察に就てはゼロなのだ。つまり学問はあるかも知れぬが、知性がゼロだ。人間性の省察こそ、真実の教養のもとであり、この知性をもたぬ天才ビルダーは野蛮人、原始人、非文化人と異らぬ。

まことの知性あるものに悪竿はない。そして、知性あるビルダーは、悪竿を作らないが、常にフライマンを苦しめ悩まし憎ませ、めつたに平安などは与へることがないだらう。

苦しめ、そして、苦しむのだ。それが釣り人の当然な生活なのだから。然し、流血の惨は、どうかな? 飲茶君! あゝ、2ちゃんは野蛮だ! 2ちゃん真犯人を検索しようよ。飲茶君!

※画像はイメージです
※坂口安吾 悪妻論のパロディ

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