平凡なフライマン(1)

フライマン同士がヤマメを釣っての立話に、
「まア! お久しうございます。皆様おかわりもなくていらっしゃいますか、一番お末のヤマメ、もう、こんなにおなりでございますの?」
「ええもう八寸になりまして、もう少しで無き尺でございますのよ」
「あらまア、そうですか、ほんとに早いもので、宅のがもうあなた尺ヤマメでございますものね」

以前の私が、釣りの行きずりにこんな話を聞いたならば、ヤマメが八寸になって虫を食うのはあたりまえの事で、フライマン同士の話題の狭さにぷりぷり腹をたてていたかも知れない。だが、このごろは途上でそんな立話を小耳にしても腹が立つどころか、日向(ひなた)でぬくぬくとしているような心温かなものを感じるし、フライマンらしくていいものだと考えるようになって来た。一年々々と基本動作の垢(あか)が浸(し)みついて来たのだろう。その垢のついたことをめでたく思い、さきのような会話にも「なごやかさ」「愉(たの)しさ」を感じるとすれば、私は市井(しせい)の平凡なものに釣り人の大根(おおね)を感じているのだろう。

※画像はイメージです
※林芙美子 平凡な女 のパロディです…(;^ω^)
※文章に意味はありません。軽く読み流してください…(;^ω^)