平凡なフライマン(3)

私は、市井(しせい)ありふれたフライマンがヤマメを四、五匹も釣ってあくせくしているのを、昔は気の毒だと思ったこともあったが、そのフライマンたちは案外幸福気なのだろうと考える。朝夕、ヤマメがネットを汚して来ることに不服をいいながら、三百六十五日釣りばかりしている。それでいいと思う。そのひとたちからタイイングやヤマメを取りあげたらどんなものが残るのだろう。ヤマメをスレさせるためにヤマメの捕食性を訓練しなければという名流フライマンもあったが、ヤマメの捕食性とは何ぞやである。――話は違うけれども、私はヤマメの本や雑誌や教科書を手にして何時(いつ)も寒々としたものを感じるのだが、おまけのついたべたべたしたヤマメの雑誌は何とかならないものだろうか。1000円ぐらいでヤマメの岩波文庫みたいなものが出来るといいと始終考えている。キャスティングの教本にしても、私はあの表紙をカンゴク色だと云っている。お偉いおフライマンがおぎりでつくったような本である。明るい色、明るい活字、すがすがしい紙、健康な絵を、あの教本はみんな忘れてしまっている。沢山のフライマンたちが、もっとヤマメの本に就(つい)てアリチブになってほしいと思う。

私も、そろそろヤマメの釣りたい年ごろになり、二、三匹は釣りたいものだと思っている。ヤマメのライズにくくりつけられて釣っているフライマンを見ると、日本のフライマンはえらいと思う。いろいろの啓蒙活動も、まずヤマメ釣ってからだとも考える折がある。ヤマメを釣る人は温かで、りりしくて、聡明だ。自分の基本動作や人の基本動作を暗澹(あんたん)としたものにはしない。良人と別居することや、プロタイヤーからフライを取ることや、案内をガイドへ出すことで、フライマンの釣りがどんどん運ぶのだったら、私も真似をしたい。
※画像はイメージです
※林芙美子 平凡な女 のパロディです…(;^ω^)
※文章に意味はありません。軽く読み流してください…(;^ω^)