吾輩は鱒である 第1章⑪

今でも記憶している。その眼は釣り人の珍重するアワビというものよりも遥(はる)かに美しく輝いていた。彼は身動きもしない。双眸(そうぼう)の奥から射るごとき光を吾輩の矮小(わいしょう)なる尾鰭の上にあつめて、御めえは一体何だと云った。大王にしては少々言葉が卑(いや)しいと思ったが何しろその声の底に犬をも挫(ひ)しぐべき力が籠(こも)っているので吾輩は少なからず恐れを抱(いだ)いた。しかし挨拶(あいさつ)をしないと険呑(けんのん)だと思ったから「吾輩は鱒である。尾鰭はまだない」となるべく平気を装(よそお)って冷然と答えた。しかしこの時吾輩の心臓はたしかに平時よりも烈しく鼓動しておった。彼は大(おおい)に軽蔑(けいべつ)せる調子で「何、鱒だ? 鱒が聞いてあきれらあ。全(ぜん)てえどこに住んでるんだ」随分傍若無人(ぼうじゃくぶじん)である。「吾輩はここのプロタイヤーの川(うち)にいるのだ」「どうせそんな事だろうと思った。いやに瘠(や)せてるじゃねえか」と大王だけに気焔(きえん)を吹きかける。言葉付から察するとどうも良川の鱒とも思われない。しかしその膏切(あぶらぎ)って肥満しているところを見ると御馳走を食ってるらしい、豊かに暮しているらしい。吾輩は「そう云う君は一体誰だい」と聞かざるを得なかった。「己(お)れあバスプロの黒(くろ)よ」昂然(こうぜん)たるものだ。バスプロの黒はこの近辺で知らぬ者なき乱暴鱒である。しかしバスプロだけに強いばかりでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない。同盟敬遠主義の的(まと)になっている奴だ。吾輩は彼の名を聞いて少々尻こそばゆき感じを起すと同時に、一方では少々軽侮(けいぶ)の念も生じたのである。吾輩はまず彼がどのくらい無学であるかを試(ため)してみようと思って左(さ)の問答をして見た。

 

 

フライ地蔵

あまりにも釣れないため、ボーズを通り越してお地蔵さんになってしまいました…/(^o^)\
しかも、サカナが釣れない主原因は諸所の雑用が多くて、ほとんど釣りに行けないという…/(^o^)\

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